今年度は、MIS構造の基本となるチャンネル上にSiNを形成するプロセスの最適化を目指し、プロセスパラメータとMIS capacitorの関係を主としてCV測定法を用いて研究を行った。 1. 界面準位とバルク内準位の切り分け CV測定では、全ての準位がヒステリシスやフラットバンドシフトに関わるため、それらの準位の空間的な位置を特定することはプロセスを考える上で重要である。そこで、SiNを形成する前にGaN表面を処理した時と、しない場合との比較を試みた。表面処理としては、酸、アルカリによるウエット処理とN2プラズマによるドライ処理を行った。 次に、SiN形成プロセスでN2流量を変えて、SiNのストイキオメトリーを意識的に変えた膜を成膜して、前処理との結果と比較した。その結果、SiNのバルク内準位は、フラットバンドシフトに深く関わり、その量は界面準位と同程度存在することが分かった。 2. 準位の起源 SiNの形成前のN2ドライ処理、及びSiNのストイキオメトリー変化サンプルから、フラットバンドは、N2 richに於いて正の方向ヘシフトすることが分かった。SiNの準位の起源としてSiのdangling bond stateであることが知られているが、それだけではなく、N空孔とSiの格子間原子との対による双極子を考える必要を示唆している。 3. KFMによるMIS構造の電位分布測定 KFMを用い、MIS構造のplan viewを測定した。測定サンプルは、アニール前後のサンプルとした。その結果は、アニールを施したサンプルのSiN表面電位は正の帯電が観察された。これは、CV測定で観察されたフラットバンドシフトとの関連を傍証するもので、SiNのバルク内準位によるものと考えられる。このような電荷は電気的測定では数多く報告されているが、実際に観察されたのは初めてのことと考えられる。
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