研究概要 |
本研究では, 記録映画やニュース映像などの古い記録フィルム映像に固有のさまざまな劣化を除去し, フィルム映像の修復のための実時間処理システムを開発することを目的としている. 古いフィルム映像に固有の様々な劣化の代表的なものとして, カメラのフィルム送り機構の不安定性やフィルム送り穴の精度不良により生じたフレーム毎の不規則な位置ずれ, フィルムへの埃や髪の毛の付着による画素の欠落であるプロッチ, 上映時にフィルムと上映機の接触により生じたスクラッチ, 不均一なフィルム露光時間によるフレーム毎の不規則な輝度値の変化であるフリッカなどが挙げられる. 本研究では, これらの劣化を自動的に高精度かつ高効率にディジタル修復を行う手法を開発する. 本申請者らがこれまでに実現してきた位置ずれ補正法とフリッカ除去法やプロッチ除去法, スクラッチ除去法のプログラムにおいて, 高解像度映像(4Kサイズ)での映像修復性能について評価した. その上で, それぞれの処理システムの統合のため, 画像データのフォーマット統一ならびに修復パラメータのフォーマットを策定した. これらにより, 処理時間の短縮ならびに処理過程でのデータの劣化を防ぐ手法を検討した. 上記のシステムのプロトタイプシステムを構築し, 実際の超高速コンピューティングシステムによる実時間での古いフィルム映像の修復システムの実現可能性について評価した. これらにより, 高解像度映像において, これまでの手法と比較して処理結果の映像を劣化させることなく1フレームあたりの処理時間を11. 4%に減少させることが出来た. さらに, 約10分の高解像度映像の処理にかかる時間を従来約1年程度だったものを約10日に短縮できた.
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