研究課題
次世代の高速衛星通信・放送システムの安定した利用を実現するために、マルチビーム衛星システムを対象に、ビームエリア毎に降雨が衛星通信に与える影響を予測し、事前に各ビームに対策を行うことで、回線品質を補償する技術の確立を目指した。このために、Ku帯衛星通信システムを用いて研究室で蓄積してきた大量の実験データを用いて、降水量と降雨強度、信号減衰の関係について統計的な性質の評価を進め、今年度は以下の成果を得た。(1)10分間降水量と観測時間内に観測される降雨強度の関係を調査し、降水量が多くなるに従って、観測される降雨強度が大きくなること、観測される降雨強度が広く分布していくこと、降雨強度の分布の広がりは一様ではなく、ピーク値をもつことを明確に示した。これまで主に用いられていた1時間降水量を用いた解析では、時間内に観測される降雨強度が小さい降雨強度側に偏って分布し、平均として過小評価される傾向があったのに対して、10分間降水量を用いることで、衛星回線に対する降雨の影響をより適切に評価できることを示した。(2)回線品質補償技術の検討に必要となる衛星回線に影響を及ぼす降雨が持続する時間の評価を行った。実験データに対して、幾つかの降雨強度の閾値を定め、それを超える降雨が持続する時間を評価した。解析の結果、降雨強度が強くなるほど閾値を超える降雨が持続する時間が短くなるが、降雨強度が30mm/hを超える強い雨の場合でも10分を超えて持続する場合があることを示した。このことから衛星回線に影響を及ぼす降雨の持続時間は数分間続くこともあり、回線を維持するためには、送信電力の増力だけでは十分な対策がとれず、符号化率の変更、伝送速度の変更、タイムダイバーシチの適応などが必要であることを示した。
すべて 2010
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Proc.of 2010 International Conference on Broadband, Wireless Computing, Communication and Applications
ページ: 581-586