地震電磁現象の観測は国内外多くの研究機関で行われており、観測周波数帯も直流からVHF帯まで、各種の周波数帯で行われている。これまで各観測機関から多くの観測データが報告されているが、地震との関連を示す科学的根拠が曖昧であったり、人工ノイズや地震以外の他の気象要因との識別が不十分だったり、必ずしも科学的な解明に至っていない。当研究チーム(吉田、西、新)はこれまで、広島市立大学の他、全国12ヶ所にVHF帯地震電磁現象の観測系を構築し、現在昼夜連続観測を行っている。 本研究の目的は、これらのVHF帯の観測系に新たにMF帯の観測系を併設し、「異なる2種類の周波数バンド(VHF帯・MF帯)によるDual Band観測」を行い、「地震に伴う電磁現象を科学的に抽出し定量的に検証すること」である。 今年度はこれまでに構築した観測系によりVHF帯・MF帯Dual Band観測を安定かつ高精度に継続することができた。また、これまでの電波観測において、本研究が対象としている地震電磁現象のみならず、その受信レベル変動として、ダクトによる異状伝搬を頻繁に確認した。ダクト伝搬は大気屈折率と関連が強いことから、伝搬区間に近い気象庁の高層気象データから大気屈折指数の高度変化(Mプロフィール)を求めた。その結果、Mプロフィールから電波伝搬異状の発生予測の可能性を見出すことができた。 次年度は本申請研究の最終年度になることから、引き続き観測を継続し、観測結果をタイムリーに学会に報告し、地震・火山活動にともなう電磁現象の解明およびダクト伝搬予測に貢献したい。
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