研究概要 |
地震電磁現象の観測は国内外多くの研究機関で行われており,観測周波数帯も直流からVHF帯まで,各種の周波数帯で行われている。当研究チームはVHF帯地震電磁現象の観測系を構築し,これまで10年以上にわたり昼夜連続観測を行ってきた。本研究の目的は,VHF帯の観測系に新たにMF帯の観測系を併設し,「異なる2種類の周波数バンド(VHF帯・MF帯)によるDual Band観測」を行い,「地震に伴う電磁現象の有無を科学的に検証すること」である。これまでに全国6ヶ所にVHF帯・MF帯の観測系を構築しDual Band観測を安定かつ高精度に継続した。特に,MF帯においては日の出・日の入りに呼応し,受信レベル変動が大きく変動することを確認した。また,VHF帯においては,その受信レベルが20dB近く上昇する現象を,夜間に頻繁に観測した。その原因を伝搬区間に近い気象庁の高層気象データを元に考察した。その結果,大気屈折指数の高度変化(Mプロフィール)と受信レベル上昇には強い相関があること,高層気象データからダクト伝搬に伴うレベル上昇の発生予測が可能であることを明らかにした。このレベル上昇はあたかも地震前兆現象のように見えることから,レベル上昇が発生した場合,高層気象データとの比較検証が不可欠であることを関連学会において注意喚起した。得られた研究成果は査読付の国際会議および学術論文誌に投稿採録され,タイムリーに報告することができた。また研究終了間際の3月11日に東北地方太平洋沖地震(M9)が発生した。当研究チームが運用中の観測系の内,震源に近い,山形,日立,横須賀観測系のデータを解析した結果,通常の大気屈折指数変動に伴うレベル変動は観測されたものの,地震前兆現象は検出されなかった。このことから地震に伴う電磁現象は,大気屈折指数変動によるレベル変動よりも小さな現象であることを明らかにした。
|