本研究では、2002年に東京大学・東京工業大学らの研究グループが打ち上げと運用に成功して以来盛んになってきている超小型衛星の軌道上運用に欠かせない姿勢変化を、衛星に搭載されているアンテナが指向パターンを有することに着目して、その様子を多地点同期受信電力測定により高精度に推定することを目的としている。 既に、平成22年度までの研究で単独地点での受信電力データによる衛星の回転速度推定に比べて、2地点の受信電力データを利用することにより理論上では1桁以上向上した精度での回転速度の推定に成功している。得られた理論値は、探査衛星Heliosを同様に偏波面の変化を利用することで0.5deg.で姿勢を検出した実績を超えるものであり、世界最高レベルの推定精度の達成を意味する。ここまでの研究成果で、本研究の目的を100%達成したといえる。 さらに、平成23年度には2地点で同期受信電力測定データを相関処理することによって短時間の受信データで回転速度を推定できることを明らかにした。実際に、札幌と東京でHIT-SATの回転角速度を推定するのに平成22年度までの研究では11.2秒の連続した受信電力データが必要であったが、相関処理を行う新しい手法では2.8秒の受信電力データが可能であることが判明した。これにより、スピンアップやスピンダウンなどの各種姿勢制御実験結果を準実時間で推定することが可能になった。 以上より、本研究では多地点同期受信電力測定による高精度な姿勢推定のみならず、より短時間受信電力データによる姿勢推定手法を確立することに成功した。
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