研究課題
音響信号に付加情報を埋め込む音響電子透かし(データ秘匿)技術において、音楽や音声に情報を埋め込んでスピーカ再生し、マイクで受音する利用者側で情報を検出して利用する技術の開発を行った。携帯電話など、利用者側の端末がリアルタイムに透かし検出する演算能力を持たない場合には、ホストコンピュータに対する音声通話によって透かし入り音声信号を伝送し、ホスト側で検出した情報を端末に送信して表示する利用法が考えられる。このような利用場面を前提に、従来からが開発してきた音響透かし技術が、空間伝播や携帯電話の音声圧縮コーデックを経ても利用可能かどうかについてシミュレーション実験と実環境における実験を行った。様々な音声および音楽信号に8bpsで振幅変調に基づくデータ埋め込みを行なった結果、背景雑音のみが重畳される場合は、6.7kbps以上のAMRビットレートにおいて、80%以上のビット検出率が得られた。さらに残響が重畳する場合は、12.2kbpsのAMRビットレートにおいて80%以上のビット検出率が得られた。データ埋め込みに伴う客観的音質劣化度合を調べた結果、残響や背景雑音が存在しても、AMRコーデックのビットレートが高ければ、品質を大きく劣化させずにデータ秘匿による情報伝送が可能であることが分かった。また、カラオケの伴奏に歌詞表示情報を埋め込んでスピーカ再生し、マイク受音して伴奏に同期して歌詞を表示するシステムを作成した。システムの性能評価として、データ埋め込み済み音楽信号に対して音質劣化の客観評価を行った結果、劣化は平均的に「やや気になる」以下であることが分かった。残響および背景雑音付加、入力過大による振幅制限、歌唱音の重畳による検出力への影響をコンピュータシミュレーションによって調べた結果、それらの変形を経た伴奏音からも、十分埋め込みデータの検出は可能であり、伴奏に同期した歌詞表示が可能であることが分かった。
すべて 2008 その他
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Proceedings of the 4th International Conference on Intelligent Information Hiding and Multimedia Signal Processing
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http://adlib.rsch.tuis.ac.jp/~akira/hit/wm_air.html