研究概要 |
携帯電話などの移動通信機器を多機能化するための技術的課題として,異なる周波数帯への取り組みが挙げられ,そのような機器に設けるアンテナにおいては広帯域化あるいは多周波共用化が必要となっている.本研究では多線条導体からなる多周波共用小形アンテナについて取り上げ,多周波共用化の設計手法,動作原理について明らかにすること,移動通信用多周波共用小形アンテナの実現を目的とする.この目的に対し,平成20年度は以下の取り組みを行い,その一部は成果として論文発表を行った. 1.従来の研究動向の調査,アンテナ検討:従来の多線条アンテナ,広帯域アンテナ,多周波共用アンテナについて調査するとともに,モード理論を用いたアンテナの解析手法について調査を行った.多線条アンテナについては従来,内田英成氏が先駆的な研究を行っており,モードを用いた解析も一部行っている.モード理論についてはL.M.Wedepohl氏が電力用送電線の研究に関連して行っているが,アンテナのような放射損失を扱った研究例は見当たらない. 2.理論検討と数値解析:多線条導体で構成したアンテナにおいて生じる電流モードの理論検討を行った.またダイポールアンテナおよびメアンダラインアンテナでの2素子同時給電の場合を取り扱い,モーメント法を用いた数値解析を行った. 3.測定装置の準備:モデル実験を行うための測定環境を整えた.既存の測定装置である電波無響室,回転台,スペクトラムアナライザなどの保守整備を行うと共に,申請設備のネットワークアナライザを購入し,設置した. 4.試作実験:多線条で構成したダイポールアンテナ,メアンダラインアンテナを試作し,そのインピーダンス特性を測定することにより,多周波共用化への効果について検討した.
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