屋内に多数のアンテナを設置し柔軟な無線アクセスシステムを実現するための検討として以下の成果を得た。 1)アンテナ配置法 中央部を粗く、壁付近を密にする不均一アンテナ配置法を検討した。壁付近のHotspot強度が向上し、部屋の平均電力向上を実現した。また不均一化で最低D/Uを引き上げられることがわかった。また均一/不均一配置を適宜組み合わせることで、電力強度、D/Uの各値をトレードオフ的に制御できることもわかった。 2)室内什器/人の影響 電力低下量はHotspotと什器/人との距離で決まり、Hotspot位置には影響しないことがわかった。このグラフが本システムの設計資料となると共に、所望のHotspot強度を得るための実動作時の制御アルゴリズムも提案した。 3)実伝播特性の測定 電界強度は数dB、解析との差があったが傾向は一致しHotspot位置はほぼ同じであった。今回は過去の研究結果を確認したに留まったが、逆に本システムではキャリブレーションが非常に重要であることが認識された。 4)不要波抑圧型周波数変換器の提案 局部発信機を2台用いてキャリア信号を抑圧するバランス形周波数変換器を提案した。市販装置により動作実験を行い、20dB以上信号を抑圧できることを明らかにしたが、実システムでは周波数安定度が問題になる。 これらから予想より空間フィルタ効果が低いことがわかり、装置やアンテナでフィルタ特性を補うと共に、狭い空間に限定したシステムにならざるおえない事がわかった。そこでこの欠点を逆手にとって以下を開始した。 5)ワイヤレス電力伝送の可能性検討 電力も空間で送れば真のワイヤレスが実現する。低い周波数のアンテナを多く用いる本システムはこれに適している。本システムで使用する小形スパイラルアンテナで検討した。シミュレーションでは0.5mで-1dB(80%)程度の効率が得られたが、実験では0.1mが限界であった。そこで、入力インピーダンスの補償による改善法を提案し、実験で動作を確かめた。
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