本研究は、協力ゲームにおいて理論的にも実際的にも重要で興味深い「最適化問題から生じる協力ゲーム」に対し、近年の重要な研究課題となっている提携の実現可能性を考察していくものである。 まず、基本的考察として協力ゲームにおけるゲームの凸性の持つ有用性とその特徴づけに関する成果をまとめ、さらに協力ゲームの解を元のゲームから加法的ゲームへの近似の視点から論じた。 次に、研究の基礎となる最適化問題について、特に有用な最小コストスパニングツリー問題に注目し、エージェント間の提携実現の可能性はエージェント間を結ぶ枝のもつコストを表すコスト行列の性質によって考察することが可能であることに着目し、エージェント間にコミュニケーション構造、階層構造、グループ構造といった構造の概念を導入した。そして、各構造が最小コストスパニングツリーの形状およびコスト分配ルールの構築にどのように反映されるかを明らかにした。特にグループ構造をもつ問題の場合のコスト分配について2フェーズでの分配法と1フェーズでの従来の分配法との比較を行い、それぞれの分配法の詳細な解析を進めた。また階層構造の場合には、その構造に即した比較的単純なコスト分配が自然な結果として生じることを明らかにした。 またこれらのゲームにおいて提携値を複数次元とした多目的ゲームについて論じた内容は、複数の著者からなるベクトル最適化の著書において「ベクトル最適化と協力ゲーム」と題する1つの章にまとめた。
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