研究概要 |
照射された電磁波の反射波から対象物に関する多くの情報を集めるために,広帯域あるいは異なる複数の周波数で動作する回路設計,反射波を分離するために必要な偏波分離器,可搬性を実現するための高周波受動コンポーネントの小型化設計,に関する検討が重点的に行われた。 加工のしやすい偏波分離器を実現するために,同じ幅のブランチラインを有する偏波分離器の検討を行い,バンド比帯域が5%で,挿入損≦0.2dB,反射損≧24dB,二つの偏波出力の間のアイソレーション≧50dBであることが確認できた。この偏波分離器はブランチ導波管の本数を増やすことで広帯域化に対応できる。 従来の右手系伝送線路では位相が遅れるのに対して,直列にキャパシタ,並列にインダクタが周期的に配置された構造を持つ左手系伝送線路は,位相が進む性質を有している。この2つの伝送線路の性質を利用して,中央に左手系伝送線路の単位セルを配置した右手系伝送線路が任意の異なる2つの周波数でそれぞれ±90度の位相差を作るλ/4長伝送線路として機能することが確認できた。具体的には,伝送線路(特性インピーダンス=50Ω,電気的長さ=74.68°@1GHz)×2+コンデンサ(5.81pF)×2+インダクタ(8.895nH)と伝送線路(特性インピーダンス=35.35Ω,電気的長さ=74.68°@1GHz)×2+コンデンサ(8.215pF)×2+インダクタ(6.29nH)を組み合わせることで,1GHzと2GHzの相異なる2つの周波数で動作する3dBブランチラインカプラの動作を確認することができた。この成果は,複数の周波数で動作するシステムの小型化設計に役立てることができる。さらに,円形の2次元伝送平面の周囲の適切な場所にポートを設けることで,3dBカプラをコンパクトに実現することができることが,理論計算上でも実験上でも確認できた。この成果から伝送平面で構成される新たな高周波受動デバイスの創出が期待できる。
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