研究の目的の実験対象を、「自動改札におけるMIセンサによる磁気切符の非接触検出法の開発研究」に絞り、初年度(平成20年度)には自動改札機ハンドラー(オムロン(株))を購入して、研究代表者が独自に開発した種々の高密度実装型の高感度のアモルファスワイヤ・CMOS方式MI磁気センサを試作改良しつつ、エドモンソン磁気切符の記録情報の非接触検出特性を測定した。その結果、高感度・高速応答MIセンサのヘッドである2mm長、30μm径アモルファスワイヤを切符表面から約0.3mmの位置で約45度の傾斜角に設置した場合に、128ビット記録の新型エドモンソン磁気切符において「MIセンサ出力波形が幾何学的三角波となり、アナログ微分回路のみで、磁気記録密度に関わらずほぼ同一高さのされ、ディジタル信号処理なしで磁気切符の記録情報の読み取りができる新現象」を見出した。 平成21年度は、以上の初年度で得られた新たな実験結果を基礎に、(1)エドモンソン磁気切符以外のより記録ビット数の多い磁気定期券の非接触読み取り、(2)MIセンサの45度傾斜角アモルファスワイヤ設置による記録磁界の非接触三角波検出のメカニズムの解析を実施した。 (1)磁気定期券の読み取り実験: エドモンソン磁気切符のサイズ30mm幅、57mm長において128ビット記録、定期券のサイズ57mm幅84mm長において174ビット記録であり、長さ方向チャンネル磁気記録長は1.47倍、記録間隔は最小100μmで同一である。しかし、MIセンサによる定期券の読み取り実験では、後半の20%程度の検出磁気パルスの高さがなだらかに減衰しており、実用的には、クリッパー電子回路でパルス高さを揃えることで、対処できるが、アナログ信号の減衰の原因を探索中である。最終年度で究明する予定である。 (2)三角波検出のメカニズム解析:磁気ダイポールの等間隔配置モデルに対する磁気ヘッド傾斜角、スペーシング、ヘッド幅およびヘッド長をパラメータとして解析を行った結果、三角波が検出される条件をほぼ把握できたが、幾何学的三角波までには到達していない。最終年度で解明する予定である。 平成22年度(最終年度)では、上記(1)の課題に対して、微分回路の後段にアンプを接続し、アンプの飽和特性を利用してディジタル出力波形を得ている。(2)の解析は続行中である。 3年間の実験の成果では、所期の非接触検出法は基本的に実現できた。
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