研究概要 |
時空システムはセルオートマトン,結合写像,結合微分方程式,編微分方程式などの数理モデルで表現される.本研究の目的は,興奮性媒体で代表される時空システムに生じる様々な非線形現象(スパイラル波,時空カオス,同期・クラスタリング等)の発生メカニズムならびに発生条件を詳細に調査し,これらの現象の抑制または制御する手法を,現実的な視点から提案することである. H22年度は,主に以下の2つの課題に取り組んだ. (1)加齢などにより,興奮波が伝搬しない線維化組織が,ある割合で心筋を占めることは知られている.この状況を考慮した興奮性媒体の数理モデルに生じる非線形現象を数値的に調査し,媒体の端を周期的に刺激することで非線形現象が抑制できることを示した.また,線維化の割合が大きい場合には,刺激の周期を長くする必要があることも明らかにした.これらの成果は,国際シンポジウム(1件)ならびに国内の学会発表(2件)で公表した. (2)興奮性媒体の代表的な数理モデルであるFHMモデルに生じる非線形現象の抑制手法の開発を試みた.特に,非線形特性が区分線形で記述できるFHNモデルについて深く検討し,ある近似を用いることで,外部刺激と伝搬波の速度の関係が1次遅れ系で記述できることを明らかにした.さらに,システム制御理論に基づいたコントローラが系統的に設計できることも示した.この成果は,国内の学会(1件)で発表し,その後,国際学術論文誌(Chaos)に採択された.
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