本研究では、フィードバック系を同定する部分空間同定法、および非線形システムの同定法の新しいアルゴリズムを開発することを目的としているが、今年度では加えて非線形フィルタリングに関する研究も実施した。本年の研究成果は以下の通りである。 1、 確定・確率システムの部分空間同定における確率成分の同定は長く放置されていた。ここでは、データ行列において過去の行数(past horizon)を十分大きくとることにより、従来からMOESP法で用いられるデータ行列にLQ分解を一回施だけで、確率成分の部分空間同定を行うことができることを示した。さらにシミュレーションによってアルゴリズムの正しさを確認した。 2、 非線形フィルタリングにおいて近年Unscentedカルマンフィルタ(UKF)が注目されてきたが、近年Sarkkaは連続・離散UKFアルゴリズムを提案している。ここでは、この連続・離散UKFの数値アルゴリズムを提案した。すなわち、確率ホイン法を利用して確率微分方程式で記述されるシステムを近似し、時間更新アルゴリズムには確定ホイン法を援用した新しい計算アルゴリズムを提案した。さらにこの方法を利用した連続時間ウィーナーモデルの同定について、良好なシミュレーション結果を得た。 3、 このUKFに関する研究成果を中心に従来からの非線形フィルタリングのアルゴリズムをまとめて2011年中の出版を目指して「応用カルマンフィルタ」の続編として執筆中である。
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