研究概要 |
本年度は,(1)拡散場におけるCa溶脱挙動に対する電気化学的促進試験を用いた長期健全性評価手法の整合性を把握することを主目的としたため,電気化学的促進試験における通電条件が拡散場におけるCa溶脱挙動に対する再現性に及ぼす影響を明らかとした.具体的には,セメント系材料として作製したモルタル試験体への通電処理を行い(電流密度は0.l, 1, 10, 20A/m2),また,拡散場におけるCa溶脱挙動と比較するため,一年間水中に浸漬したモルタル試験体と通電処理を行ったモルタル試験体との比較を行った. その結果,Ca溶脱に伴う劣化が確認される範囲では浸漬法及び電気的手法におけるCa溶脱特性は概ね一致することが確認された。しかしながら,電気的手法におけるCa溶脱特性に関して,試験体内部及び試験体内部に埋設した陽極近傍において浸漬法との差異が確認された.すなわち,電気的手法において,試験体内部におけるC3S及びC2Sの水和に伴うC-S-H等のCa水和物の生成に伴う空隙の緻密化及び陽極近傍におけるエトリンガイトの析出に伴う空隙の増大が推察された.これは,浸漬法におけるイオン移動は拡散現象であり,電気的手法におけるイオン移動は電気泳動により陰極側及び陽極側に泳動するイオンが拡散現象と異なるためであると考えられる. 一方,長期間に亘り電気的手法を用いた場合,本研究により得られたセメント系材料の電気的手法におけるCa溶脱特性は浸漬法におけるCa溶脱特性に関する既往の知見と一致することが確認された. 今後,長期に亘るセメント系材料の健全性評価手法としての実用性を高めるため,比較的低電流密度とした場合の電気的手法におけるCa溶脱特性を把握することが課題であると考えられる.
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