研究概要 |
本年度は,申請書目的(1)で検討した長期健全性評価手法において前年度課題として挙がった,電流密度がセメント系材料の変質におよぼす影響を検討することを主眼とし,「長期に亘るCa溶脱に伴うセメント系材料の微小領域における変質を把握すること,さらに,電気的Ca溶脱促進試験を用いた,拡散換算期間の算出方法の検討を行うこと」を目的とした. その結果,電気的手法におけるCa溶脱特性に関して,試験体内部及び試験体内部に埋設した陽極近傍において浸漬法との差異が確認された.すなわち,電気的手法において,試験体内部におけるC3S及びC2Sの水和に伴うC-S-H等のCa水和物の生成に伴う空隙の緻密化及び陽極近傍におけるエトリンガイトの析出に伴う空隙の増大が推察された.これは,浸漬法におけるイオン移動は拡散現象であり,電気的手法におけるイオン移動は電気泳動により陰極側及び陽極側に泳動するイオンが拡散現象と異なるためであると考えられる. また,拡散換算期間の算出に関しては,本研究の範囲内では,0.5,1.0および5.0A/m2の電流密度を適用した場合,水セメント比を0.55,砂セメント比を2.0とした供試体において,拡散換算期間の算出及び空隙径分布の再現精度は高く,水セメント比を0.43、砂セメント比を1.0とした供試体においても,拡散換算期間の算出精度は低いが空隙径分布の再現精度は高いことが確認された. 今後,長期に亘るセメント系材料の健全性評価手法として,広く電気的Ca溶脱促進試験を用いるためには,低水セメント比および低砂セメント比の材料における取り扱いが課題であると考えられる.
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