研究概要 |
寒冷地におけるコンクリート構造物は,凍結融解作用による表層劣化と,それに伴う鉄筋腐食を引き起こす可能性が極めて高い環境下にあると言える.しかし,それら凍結融解作用を主要因とした材料劣化の程度が構造性能に及ぼす影響については殆ど明らかにされておらず,性能低下を考慮した合理的な設計,維持管理を実施するまでには至っていない そこで本研究は,寒冷地における鉄筋コンクリート(以下,RC)構造物を対象とし,その劣化過程(進展期・加速期・劣化期)の材料劣化レベルと構造性能との関係を明らかにするものである. 平成20年度は,コンクリート中への塩化物イオン浸透性に及ぼす凍結融解作用の影響について,実験的に検討を行った.得られた結果の概要を以下に述べる。 (1)凍結融解作用を受けるコンクリート表層部の全塩化物イオン濃度は,温度20℃および0℃の一定条件下におけるそれと比較して,高い値を示す傾向にあることが分かった。これより,凍結融解作用を受けるコンクリート中への塩化物イオンの移動現象は,濃度勾配による拡散に加えて,溶媒の移動も考慮した検討が必要であることを明らかにした. (2)凍結融解作用を受けるコンクリート表層部の全塩化物イオン濃度の増加は,水セメント比が高いものほど,凍結水量の増加に起因した未凍結水の移動や塩化物イオンの濃縮の影響を受け,大きくなる傾向にあることを確認した. (3)材齢初期に乾燥を受けた表層部コンクリートの凍結融解環境下における塩化物イオンの移動現象について考察を加えた.
|