研究概要 |
平成23年度は,曲げを受ける鉄筋コンクリート部材の材料劣化レベルと構造性能との関係モデル(曲線)を整理した.また,コンクリートの凍害が鉄筋の付着強度特性に及ぼす影響についても実験的に考察を加えた.さらに,寒冷地にある実橋梁の耐久性調査を実施した。得られた結果の概要を以下に述べる.(1)塩化物環境下において凍結融解作用を受けたコンクリートは,健全な供試体に比べ最大付着応力が低下した.さらに,凍結融解作用を受けたRC供試体は,健全供試体と比較し同一の付着応力におけるすべり量にも大きくなる傾向にある.また,凍結融解を受けたRC供試体のかぶり厚さの違いに着目すると,最大付着強度の差は,ほとんど見られなかったが,すべり量には差が確認された. (2)厳しい凍害環境下に設置されている橋梁(RC)の耐久性調査を実施した.本調査対象の橋梁は,供用開始後,約55年経過している.その結果,主桁および橋脚では,圧縮強度に比例して静弾性係数も増加しているが床版では圧縮強度が高いにも関わらず静弾性係数が低い値を示すことが把握された.また別途測定した,超音波伝播速度の結果より床版コンクリート表層部においてが低い値を示すことが確認されたことから,床版表層部においてひび割れが多く発生していた可能性があると考えられる. (3)橋脚では表層部において塩化物イオンが浸透している事が確認できた.床版から雨により流れてきた凍結防止剤による塩化物イオンが浸透したと考えられる。床版表層上部では,冬季に散布された凍結防止剤が雨や雪などで解け浸透していったと考えられる.また,床版下部の表面においても塩化物イオンの浸透が確認された.これは主として,車両の交通により巻き上げられた凍結防止剤によるものと推察される.(4)床版では,中性化の進行が確認できなかった.また,中性化が進んでいた主桁では,あまり雨などの影響を受ける事がなく常に乾燥していた可能性があるため,中性化が進む速度が促進されたと考えられる.(5)平成20年度~平成23年度の研究成果を総括し,曲げを受ける鉄筋コンクリート部材の材料劣化レベルと構造性能との関係モデル(曲線)を提案した。
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