コンクリート構造物を効率的に維持管理していくためには、実構造物で発生する可能性が高いとされるマクロセル腐食の発生機構を明確にした上で、信頼性の高い診断技術と適切な補修方法を確立することが不可欠となる。そこで、本研究では、供試体を用いた実験により、マクロセル腐食電流による腐食量増大の程度、マクロセル腐食が生じた環境での自然電位法(非破壊試験)による腐食診断技術の適用性、マクロセル腐食による補修後の再劣化防止を考慮した補修方法について検討した。平成22年度は補修方法について検討した供試体の解体調査等を行うとともに、これまでの実験結果のとりまとめを行った。 その結果、自然電位法については、マクロセル腐食の影響が顕著な場合、アノード部の自然電位が100mVほど貴になることも考慮して診断しなければならないことが明らかになった。ただし、マクロセル腐食の影響を顕著に受ける場合でも、アノード部の自然電位が相対的に卑な値を示すので、自然電位の測定結果を用いた腐食診断は有効と考えられる。補修については、カソード部(補修を模擬した部分)に電気抵抗の大きい補修材を用いることでマクロセル腐食電流を抑制できることを示した。カソード部に水セメント比の小さなコンクリートを用いた場合、測定されたマクロセル腐食電流は若干低下したが、解体後の腐食量では顕著な効果は認められなかった。 一方で、マクロセル腐食電流による腐食量の増大については、気温の変動や降雨などの気象条件、カソード部のコンクリート品質などによって異なることを定性的には確認できたが、アノード/カソード鉄筋間に生じるマクロセル腐食電流量だけでは腐食量の増大を十分には説明でないおそれがあり、課題として残った。
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