震源域では、振幅・振動数特性並びに位相特性の違う地震波があらゆる方向から伝播し、基礎を通じて構造物に入射されるため、震源から地盤・基礎・構造物系を一体として捉えて基礎・構造物の非線形応答挙動を分析しなければならない。現状では、震源から構造物に至る全体系を線形系モデルと仮定する場合には、全体系の地震応答挙動を正確に計算できる。しかし、非線形系としての取り扱いが必要となる構造物基礎周辺地盤から基礎・構造物系の応答を組み込んだ震源から構造物に至る全体系の3次元非線形応答挙動に関する合理的評価方法とその予測法は確立されていない。したがって、震源断層近傍では、震源断層の破壊伝播特性、表層地盤特性に影響されて構造物基礎への入力地震動が空間的・時間的に大きく変動するため、震源断層・表層地盤・基礎・構造物系を一体として捉えた解析席モデルを構築し、構造物の3次元非線形応答挙動を評価する必要がある。 本年度は、以上のような考え方を具体的に示すために、表層地盤の各層の厚さと弾性定数を地表面の振動荷重による弾性波動を使って推定する方法と常時微動と近傍の強震記録を利用して表層地盤の震動特性を考慮した地震動の推定法を開発し、震源断層近傍の永久変位を含む地震動による橋梁の3次元非線形応答挙動を調べ、以下のような結論を論文として公表した。 (1) 震源断層近傍の橋梁の位置と断層を横断する橋梁等によって非線形応答特性が大きく異なり、震源断層上端の深さと橋梁の位置と断層の幾何学的位置が大きな要因であることわかった。(2) 表層地盤の厚さと弾性定数を弾性波動を使って推定する方法の有効性を数値計算法により確認した。(3) 地盤の数理モデルによる地震動の推定法とは別に、常時微動と近傍の強震記録を利用して表層地盤の震動特性を考慮した地震動の推定法の有効性を観測記録から検証した。
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