震源域では、振幅・振動数特性並びに位相特性の違う地震波があらゆる方向から伝播し、基礎を通じて構造物に入射されるため、震源から地盤・基礎・構造物系を一体として捉えて基礎・構造物の非線形応答挙動を分析しなければならない。現状では、震源から構造物に至る全体系を線形系モデルと仮定する場合には、全体系の地震応答挙動を正確に計算できる。しかし、非線形系としての取り扱いが必要となる構造物基礎周辺地盤から基礎・構造物系の応答を組み込んだ震源から構造物に至る全体系の3次元非線形応答挙動に関する合理的評価方法とその予測法は確立されていない。したがって、震源断層・地盤・基礎・構造物系を一体化した解析モデルを構築し、その3次元非線形応答挙動の評価が必要である。 本年度は、2000年から2008年間に起きた9個の被害地震の震源域での観測地震動記録から震源域の実地震動特性をモデル化し、上路式鋼アーチ橋の非線形応答挙動への影響を調べた。また、震源域での断層による地盤の永久変位を含む地震動の計算方法の改良を行い、完全な剛性行列による地震動計算法の定式化に成功し、逆断層による上路式鋼トラス橋の3次元非線形応答挙動を調べ、以下のような結論を論文として公表した。 (1)震源域の実地震動特性のモデル化と実地震動の位相波から、地震動上下成分と水平成分を推定する方法を提案し、震源域では上路式鋼アーチ橋の非線形応答挙動への上下動の影響が大きいことを示した。(2)無限弾性体の剛性行列と震源断層から放射される地震波変位の2つ物理量から震源断層による永久変位を含む水平成層地盤の地震動を計算するという完全な剛性行列による地震動計算法の定式化とその検証を行った。(3)逆断層では表層地盤の隆起や沈下といった地盤の上下成分の永久変位のため上路式鋼トラス橋の3次元非線形応答挙動は横ずれ断層とは大きく異なり、地震動上下動成分の影響が大きいことを明らかにした。
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