研究概要 |
今年度は,常時微動測定に基づく護岸構造物・地盤系の動的解析モデルの作成方法の構築を目的として研究を行った.この意義は,設計図や地質図などの情報が不足している埋立護岸においても,常時微動を用いることにより,護岸の耐震性評価が可能になる点である.今回対象としたのは,建設後40年以上経過している江東区豊洲南部の埋立護岸である.はじめに,護岸の背後地盤において常時微動のアレイ観測を行い,常時微動のH/Vスペクトル,および,常時微動に含まれるレイリー波の位相速度の推定を行い,これらの推定値を説明する地盤モデルの作成を順解析的に行った.なお,今回は近くに標準貫入試験の結果があり,初期モデルの作成においてはこのN値を用いた.この情報が無い場合とある場合での結果の差異についての検討は,次年度に行う予定である.いずれにしても,本手法の理論的背景は,地盤を平行成層と仮定した場合でのレイリー波の性質である,したがって,この性質が,護岸近傍で,平行成層とどの程度の同一性があるかを確認・検討しておく必要がある.そのため,数値解析プログラムを用いて,この確認・検討を行った.その結果,護岸付近においても,そのレイリー波の性質は,護岸近傍の地下構造を水平成層地盤と仮定したときとほぼ同様の性質であることが分かった,したがって,常時微動を用いて護岸近傍の地盤モデルが作成できることが示された.今年度は,地盤の動的解析においては液状化の考慮,および,護岸構造物のモデル作成も行う予定であったが,これらは次年度に行うこととした.
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