研究概要 |
本研究は,道路施設/鉄道路線のような社会基盤施設を対象とするもので、本21年度は、「Phase I:線状構造物の地震リスク解析」を継続するとともに,当初の計画である「Phase II:リスクファイナンス(リスク転嫁策)の適用性の検討」を実施した. 1.Phase I(線状構造物の地震リスク解析)の継続:以下の3点について研究を行うとともに,関連学会に投稿した(査読中). ・都市内鉄道路線の機能停止期間に関する地震時システムリスク解析(土木学会論文集) ・ラダー系システムを用いた高速道路の地震時車両通行機能性評価(土木学会論文集) ・供給量に着目したサプライチェーンの地震時業務停止期間に関するリスク評価(地域安全学会研究発表会) この成果の一部は,2^<nd>ICACI/International Conference on Asian Catastrophe Insurance, Beijingにて講演した. 2.Phase II:地震リスクファイナンス(リスク転嫁策)の調査検討 土木構造物を対象とした損害保険とキャタストロフィーボンドの現状と適用例に関する調査を行った.特に,鉄道施設の地震リスク転嫁に適用する場合,地震リスクファイナンス手法として,リスク移転を目的とするもの,および手元流動性の確保を目的とするものに大別され,それぞれの手法について調査を行った. ・リスク移転を目的とするもの:地震保険、地震デリバティブ、キャタストロフィーボンド、コンティンジェント・エクイティ、 ・手元流動性の確保を目的とするもの:コンティンジェント・コミットメントライン、グループ内に保険会社を設立するキャプティブこれらの地震リスクファイナンスはそれぞれの特徴を有するが,被災時の支払い要件,ベーシスリスク,支払いの即時性,対象が物損のみか(利益損害も含むか),などが論点となる.また,我国での前例のないもの,前例の少ないものは,金融機関のノウハウと積極姿勢,制度設計上の問題点,海外資本への依存,再保険の引き受け手などが,検討課題として挙げられる.
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