研究概要 |
提案せん断構造体の15層振動模型を用いて、複素固有値解析で予想される減衰装置の減衰係数と振動モードの減衰定数の関係を振動台実験により検証し、地震応答解析で予想され応答性状の妥当性を地震波振動台実験で検証した。振動台実験は、九州産業大学の地震波振動台(搭載能力1ton)で実施した。 自由振動実験および共振振動実験で得られた固有周期と固有振動モードおよび付加減衰は固有値解析・複素固有値解析で予想された結果と良い対応を示した。しかし、振動台の正弦波形に高次の振動数波形が混入し、これを排除できなかったので、実験で得られた共振曲線の振幅は理論値より小さくなった エルセントロ地震、タフト地震、八戸地震および宮城県沖地震の加速度記録(合計7波)を用いた地震波振動台実験を実施し、弾性地震応答解析の結果と比較した.振動台実験と応答解析の変位応答は良い対応を示し,応答解析に用いた振動モデルとプログラムは実構造の応答を予想できることが確認された.ただし,振動台の加速度スペクトルには、地震波のスペクトルと異なる部分が確認されたので,提案構造の加速度応答の低減効果については,振動台実験では確認できなかった。 実規模の提案構造について、弾性地震応答解析を実施し、地震応答性状を分析した。減衰装置を装着しない提案構造では、従来構造に比べて加速度応答が約50~300%低減するが,変位が約50%~100%増加すると予想された。減衰装置を装着する提案構造では,従来構造に比べて加速度応答が少なくとも約50%低減され、最大変位は従来構造と同程度になり、ベースシア係数は少なくとも50%以上低減すると予想された。 以上より、提案構造は従来構造に比べて応答加速度が大幅に小さく,躯体に作用する断面力も大幅に小さくなると予想され、従来構造に比べて高い耐震性を有していると考えられた。
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