研究課題
欧米における過去の巨大山崩れにともなって発生した土石流の流下到達距離を、崩壊規模と流下高低差をパラメータにしてプロットしたScheidegger(1973)のグラフに倣って、主として日本における土石流災害のデータを研究代表者がプロットしたところ、Scheideggerが示した傾向と大きく異なる結果がえられた。数百万から数千万・数億立米という巨大山崩れを対象としたScheideggerのデータと違って、研究代表者が収集したデータは我国で毎年発生する程度の土石流が多いうえ、欧米と比べて我国が多雨湿潤であるためであろうが、我国の土石流の流下到達距離がScheideggerのデータよりはるかに大きいことが判明した。我国のデータを見る限り、土石流の流下高低差と水平到達距離の比が、崩壊規模にかかわりな<0.1以上であることが分かった。斜面崩壊の発生位置から高低差1に対して、最大限で水平距離10の下流位置まで、土石流が到達し得るという結論である。土石流による被災の惧れが危惧される民家や道路・構造物から見て、谷の上流に向かって高低差1に対して水平距離10の範囲内に崩壊しそうな斜面がなければ、土石流の心配はおそらくないだろうと判断してよい。崩壊しそうな斜面をどのようにして発見するかが次の課題になるが、従来から多用されてきた目視による判定にくわえて、地下水流がたてる音を聴音器により発見し崩壊危険地帯を特定する方法が有望であるとの報告が出てきたので、携帯式の地中音聴音器を試作した。これにより斜面崩壊が発生しそうな場所を特定しやすくなったので、今後現場で試用を重ねて改良することが可能になった。力学的な基礎データ蓄積を目的として、泥濘化した土石流土砂の力学特性を現地において簡便に調査するための小型コーンと小型ベーンを作製し、実用に耐えるかどうか試用してみたところ、砂分を多く含む中間土に対しても良好な結果がえられた。
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