研究概要 |
本研究の目的は,広範な粒度を有する礫混じりの堤防材料の変形・強度特性を評価する手法を提案することと,慣用解析で用いる強度定数の合理的かつ経済的な設定法を示すことである。平成20年度は、国交省により詳細点検が実施されている実在堤防から採取した礫混じり砂試料を用いて室内試験により検討を実施した。大きな礫を含む原粒度試料のせん断特性を評価するために大型三軸試験を実施するとともに,通常の実務で採用される中型および小型供試体による三軸試験を行った。小型・中型供試体の場合には,それぞれの供試体径の1/5程度が最大粒径となるように粒度調整を行ったが,本研究では,大きな礫を単純に取り除く通常粒調試料と,新たな粒度調整手法として考案した礫分含有率を変化させない礫分粒調試料の2種類を用いた。せん断条件はCUバー条件であるが,実務の設計で用いられる全応力法のCU条件による評価も同時に実施している。 試験結果は以下の通りである。通常粒調試料の場合,同じ現地堤防の乾燥密度で供試体を作製しても,供試体寸法により大きく有効応力経路は異なり,変形・強度特性に差が生じることが明らかになった。すなわち,供試体寸法が小さくなるほど,密詰め砂の傾向が強く表れる。一方,礫分粒調試料を用いた小型三軸試験の結果は,原粒度試料による大型三軸試験の結果と非常に近い結果となり小型三軸試験を用いても,原地盤の変形・強度特性をある程度評価可能であることを示すことができた。 一方,堤防砂による不飽和せん断特性の評価も実施するために,不飽和三軸試験の予備実験も同時に開始した。浸潤・乾燥を繰り返す河川堤防の特殊性を評価するために,乾湿繰り返し履歴を与えた場合に,堤防砂の変形・強度特性が変化し,せん断強度に劣化が認められることが示された。
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