研究概要 |
樹冠と幹で構成される高木群落の内部及びその下流域において,樹冠部の流水抵抗の相違が,流れの構造の遷移に与える影響を実験的に検討した.幹部分は高さ6cmとし,直径1cmの木製円柱を10cm間隔で千鳥上に配置した.樹冠部には2通りのものを使った。一つは,昨年度と同じプラスチック透水材(樹冠モデルA)で,もう一つは,直径2.5mmの竹串を2.5cm間隔で鉛直に配置に配置したもの(樹冠モデルB)を用いた。流水抵抗は前者のほうが後者よりも大きい。 実験の結果,水深によっては,樹冠モデルAでは樹冠内に固有浸透流速にほぼ等しくなる部分が現れても,樹冠モデルBではそうはならない場合があることがわかった。前者では,幹部分の流れとの間に自由せん断層が形成されるが,後者ではそうはならない。これは高木群落下流での剥離渦の形成にも大きな関係があることが認められた。 高木群落下流側での流れの遷移に着目すると,樹冠モデルAとBでともに樹冠と幹部との間に自由せん断層が形成されている場合,これが流下しながら通常の開水路の流速分布に遷移するまでの距離は,さほど変わらないことがわかった。これは,モデルAの場合は,樹冠と幹部との流速差が大きい代わりに両者の混合が盛んであり,モデルBの場合はその逆が成り立つためである。 以上のように高木群落の流れのおいては,樹冠と幹部分との流水抵抗の差と水深によって,流速分布の構造そのものが異なる場合があること,また流速分布の構造が同タイプの場合には,下流域で通常の開水路流れの流速分布に回復するまでの流下距離はさほど相違ないことがわかった。
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