研究概要 |
樹冠と幹で構成される高木群落の内部及びその上流側と下流域において,樹冠部の流水抵抗と水深の相違が,流れの構造の遷移に与える影響を実験的に検討した.幹部分は高さ6cmとし,直径1cmの木製円柱を10cm間隔で千鳥上に配置した.樹冠部には3通りのものを使った。そのうちの2つは,昨年度と同じプラスチック透水材(樹冠モデルA)と直径2.5mmの竹串を2.5cm間隔で鉛直に配置に配置したもの(樹冠モデルB)で,今年度はさらに直径3mmの竹串を5cm間隔で鉛直に配置に配置したもの(樹冠モデルC)を追加して実験を実施した。流水抵抗はA,B,Cの順に小さく,Cの流水抵抗は幹部分とほぼ同じである. 実験の結果,得られた知見は以下のとおりである.(1)樹冠モデルAでは,樹冠内に固有浸透流速にほぼ等しくなる部分が必ず現れ,それと幹部分の流れとの間に自由せん断層が形成される.(2)樹冠モデルBでは,水深が深い場合には,モデルAと同様な流速分布であるが,水深が浅くなると,樹冠内では固有浸透流速に相当する部分が消失し,水面に向けて流速が減少するせん断層のみが形成される.(3)樹冠モデルCでは,実験した水深範囲では,幹部と樹冠部とに明確に分かれるような流速分布にはならず,全体として1つの層が形成される.(4)高木群落の上流側から群落内部の遷移過程においては,速やかに上記3タイプの流速分布に遷移する.(5)縦断方向に水深を変化させて不等流状態で実験したところ,水深変化に応じて,等流水深で実験した場合と同様の流速分布が見られた.不等流解析を行う場合には,群落内の流速分布については,等流状態の分布形を与えてもよい近似になると推察される.
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