研究概要 |
礫床河川における樹林化砂州は治水上,河川環境上の問題からその効率的な維持管理の在り方が求められている.本研究では比高の高い樹林化砂州を砂州の部分掘削により,低水路線形を考慮しながら砂州内部に出水を導く掘削路を設けることで,中小規模の洪水営力を利用して洪水撹乱を誘発させ,樹林化抑制と裸地砂州の復元(礫床の再生)を可能にする河川維持管理手法の構築を目的とした.研究対象とした渡良瀬川では平成19年に掘削路を設ける実験工事を行い,中小出水を経験した現在においてもモニタリングを通じて,礫河原の再生,植生化の抑制が認められている.平成21年には,新たな小規模掘削路を設けて,これまで有意な洪水撹乱が期待できなかった砂礫州の環境改善を検討し始めた.また,掘削路によって砂礫州が洪水撹乱を受けることにより,州上に蓄積された河床材料が低水路に供給されることで砂礫の河道内再移動が生じる.これはダム,横断構造物による供給土砂の低減を回復させるものであり,その効果評価が重要となる.このような視点から低水路への砂礫供給の効果を現地モニタリング,水理実験,数値解析から検討した.さらに,砂礫州と低水路の一体的管理を構築するために,樹林化対策,流下能力の管理,水衝部の緩和効果など,目的別の砂礫州の掘削の在り方についても検討した.
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