研究概要 |
我が国の波浪情報データベースは観測主体のため地点や期間が限られている.一方近年,海洋観測レーダや波浪推算モデルなどが活用できるようになっている.このレーダや波浪推算技術を組み合わせることにより,任意の地点での波浪情報が取得できると期待できる,またこれまで一般的であった波浪情報,すなわち有義波高や有義波周期,波浪スペクトルに加え,最大波高の値も波浪情報としては重要である.そこで本研究ではXバンド海洋観測レーダおよび第三世代波浪推算モデルを用い,海洋観測レーダの計測可能性と計測精度改善,沿岸微地形を考慮した波浪推算モデルの高精度化,波浪推算モデルので最大波高の推定,の3点について検討を行った. 本研究では,市販の船舶用Xバンドレーダを一部改良して海洋観測レーダとして海洋波浪の方向スペクトルの観測を試みた.まずこのレーダのアンテナの回転速度を2倍に変更することにより,これまで計測可能な波浪スペクトルの高周波成分を従来の周期1.5秒までから周期3秒までに拡張できた.また方向スペクトル推定手法でもこれまでの線形解析手法から非線形解析手法へと改良し,その推定精度を向上させた. 沿岸域の微地形の影響を波浪推算モデルで再現するために,沖波が沿岸域へ伝播する際の伝達率を波浪方向スペクトルの主成分ごとに評価する手法を導入した.これにより,そしてこの伝達率をkalman filterにて求めた.これによって,季節ごとに特性の異なる伝達率を精度良く推定でき,沿岸域での波浪推算精度の向上が可能となった. 最大波高を推定するために森・Janssen・川口(2008)の異常波浪の予測理論を波浪推算モデルに導入し,実海域において波浪推算を行った.最大波高は統計的にも不安定で観測でも変動が大きいが,推定された最大波高は観測値をほぼ再現しており,実用レベルであることが示せた.
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