研究概要 |
巨石や転石,橋脚を含む急流河川の流れの数値解析技術並びに,環境修復技術を構築するために実験的かつ解析的な研究を進め,自然石による多段式落差工の効果やダムによってせき止められた土砂を還元する場合の土砂の移動状況を数値シミュレーションすることによりダム下流部の環境修復技術の構築を目指した.得られた主要な成果は以下のとおりである. (1)巨石による落差工の検討を行った結果,横断方向に直線型に設置する場合よりもアーチ頂点を上流側に向けるアーチ型の堰の方が上流側水深を低下させる効果を有するとともに,流れを中央に向けるなどの効果があり,アーチ型落差工は水位上昇を防ぐことや両岸の被災防止の観点から有効であることが示された. (2)落差として用いる巨石の大きさについて検討した結果,大きい巨岩の落差工を設置するよりも,適切な大きさの多段式の落差工の方が,水面形や流況の面や,魚類の遡上降下などの面からもから有利であることが示された (3)巨石による堰の土砂流失防止効果について検討した結果,巨石による落差工あるいは中型の大きさの石による多段式落差工を設置しても岩河床などの場合には容易に土砂が流失することが示された.改善策として,設置多段式落差工内に,石礫を敷き詰めることで,還元土砂の流失防止効果がかなり増加することが示された. (4)自然石は単独では急流河川などの掃流力の大きな河川では流失されてしまうため,相当大きな巨岩が必要となるが,自然石を連結することにより,掃流抵抗を大きくすることができるため,現地施工性や景観面からみてすぐれている.
|