研究概要 |
本年度は,数値解析モデルを構築するにあたり,水側の流速値から実験的に求めた外挿法に基づいて水面の移動速度を与える方法について試みた.風速が低風速で波面がそれほど発達しない場合については,実験結果に対して比較的良好な結果が得られたものの,波が発達し,乱流場が発達するにつれて水面の移動速度を与えることが難しくなった.昨年度から引き続き行ってきたそろばんグリッドについても,研究目標であった3次元高精度モデルの構築に対し,満足できる精度を得ることができず,今後も引き続き改良を行う必要があった 一方,数値解析と同時並行的に進めてきた実験的研究については,昨年度行った波面上の気流の剥離の頻度について風速条件,吹送距離条件を増やし,詳細に検討を行った.昨年度は,気流の剥離の発生頻度が粗度長に依存すると考えてきたが,Toba and Koga (1986)が提案した風波レイノルズ数R_Bを用いると気流の剥離の発生頻度とともに,波形勾配や界面抵抗係数などがR_B=200~1000で一定値に収束することを明らかにした.これは,風波界面と波面上の気流とが剥離という現象を通じて運動量輸送の調整を行い,局所平衡状態になることを示しており,より発達した波の状態においては,風波の砕波がこれを担うが,砕波を伴わない状況においては気流の剥離が極めて重要であることを明らかにした 気流の剥離と界面抵抗係数の収束については,台風下の高風速時に界面抵抗係数が一定値に収束する問題につながると考えられる.さらに大きなR_Bに対して気流の剥離がどのように影響するのかについて検討を行いたい
|