本研究は、自己組織化モデルを用いて、広域生活圏を構成する都市と農村の階層原理をモデル化するとともに、地方部を対象とした国土管理上の施策の有効性を把握することを目的に行った。 平成22年度は下のことを行い、3年間の研究をまとめた。 1)階層原理のモデルの改良 平成21年度のモデルの改良を踏まえて、北海道ブロックの実データを用いた分析を行った。特に、第1階層である「地域ブロック」と、それを構成する第2階層である「生活圏域」という階層構造設定の妥当性を考え、中間層の導入や階層構造の除去を試みて現状再現性の高いモデルの実用を確認できた。 2)生活圏域を対象とした国土管理施策の有効性の検討 ここでは、構築した自己組織化モデルを用いて、産業構造(新しい市場形成を含む)・生活施設配置・アクセシビリティを政策変数に取り上げて、自然共生地域の定住・交流人口の変化を把握し、施策効果とその発現速度から施策の有効性を評価した。「交通」については、本研究で重要な位置づけを占める近接性指標を導入した。この指標は、もともと、地理学で使われた概念であり、オーストラリアのJ.BLACK教授との共同研究から、交通計画分野で扱っていたアクセシビリティ指標に地理学の概念を導入して、提案したものである。また、「生活圏域」については、定住人口の定着を目指した地域づくりの視点だけでなく、「地方部の新しい価値観による市場形成」により、交流人口を獲得していくことが重要であり、これらの施策効果についてもモデルでシミュレーションできた。
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