研究概要 |
本研究は,特定の都市への来訪者・ツーリストを対象として販売を想定する交通パス(都市内の鉄道・バスなどが1日など一定期間,定額で利用できる乗車券)に対する利用意向の把握をアンケート調査に基づいて行い,効果がどのような関係主体に及ぶのか,また導入にあたっての問題点について明らかにして,その対応策について海外の先進事例との比較を通じて明らかにすることを目的としている. まず,日本国内における導入状況に関する分析では,近年,目覚しい発展をとげる電子マネー機能付き交通系ICカード乗車券について,大都市,地方都市及び島嶼部の導入事例を比較し,その機能と役割について考察した. 次に,国外での導入状況では,交通パスが導入されている海外の諸都市を対象として,その地域の交通政策,人口,公共交通機関分担率などを術瞰した後,交通パスのサービス内容について比較を行った,その結果,さまざまな特徴的サービス内容が抽出され,例えばデータが得られた都市のなかで外国人旅行者数が最も多かったロンドンでは,日数別パス,10人以上の割引,来訪者向けICカードにdaily price capping(ある一定乗車回数まで乗車券逐次購入時と同額で,それを越えると一定料金となるシステム.利用するゾーン数によって一定料金設定額が異なる)の機能を持った交通パスを販売するなど,先進的な取り組みがなされていることが明らかになった. さらに,来訪者アンケートによる交通パスの利用意向分析では,東京区部における外国人来訪者データを用いて,交通機関利用に対する時間的,心理的負担感を考慮したCVMモデルの構築を通じた仮想の交通パスに対する支払い意思額を導出した.その結果,心理的負担感,時間的負担感を認知している場合,50代以上来訪者,同行者数4人以上の場合で支払意思額が130円~230円程度増加することがわかった.
|