平成23年度は、ケーススタディ対象地域である堺市において、2つの市民意識調査を実施した。 ひとつは、既存軌道(阪堺線)活性化のための運賃補助や軌道整備等の公的支援が平成23年1月から開始され、順調に乗降客数が増加している阪堺線沿線地域での調査。もうひとつは、それ以外の堺市全域における公共交通意識調査である。アンケートの内容は、阪堺線やその他の公共交通の利用状況、交通行動、利便性評価等に関するものである。アンケート配布対象は、阪堺線沿線2000世帯、堺市内その他地域10000世帯であり、両調査合わせて約3000サンプルを回収し、分析を実施した。 調査の結果、既存軌道の支援策や各種啓発活動の結果、新規の軌道需要が見られ、また自動車利用からの転換等の交通行動変化が見られた。また、調査では積極的に啓発活動を行った市民とそうでない市民とに区分して、公共交通に対する意識や評価、交通行動の変化の違いについて分析した。具体的には、詳細なパンフレットを同封して解説したグループ、簡易なパンフレットのグループ、特に何も回生しないでアンケートを行ったグループの3つに区分した。その結果、啓発活動の強弱が公共交通に対する意識や評価について、有意に効果をもたらすことが確かめられた。 これらの分析結果に基づいて、市民属性の別にどのような内容・方法の啓発活動がより効果的であるかについて分析し、社会的合意形成の観点から交通施設整備計画の提示方法について明らかにすることが今後の研究課題である。
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