研究概要 |
メタン発酵能と脱窒能が共存する複機能グラニュールの嫌気性グラニュールからの形成条件について、培養槽への脱窒細菌の植種、流入硝酸性窒素/CODcr,比(以下N/CODと記す)、流入硝酸性窒素負荷ならびに時間経過の点から実験的に検討した。嫌気性グラニュールには潜在的に脱窒細菌が存在しており、外部から植種をしなくても植種した場合と比べて大きな時間差なく複機能化が可能であった。また、脱窒への必要量に比べて十分な有機物が供給されていれば、流入硝酸性窒素負荷や流入N/COD比が高い条件において腹機能化までの時間が短くなる傾向が見い出された。定期的に採取したグラニュールの脱窒ならびにメタン生成活性試験から、培養槽の流入N/COD比(0.03〜02)の増大と時間経過(約150日間)に伴い、グラニュールの脱窒活性(比脱窒速度)が徐々に増大し、メタン生成活性は特にN/COD比が0.1を超えると低下することがわかった。しかし、約1年経過後でも両活性は常しにグラニュール内で安定的に維持されていた。グルコースと酢酸を用いて炭素源の影響を調べたところ、培養開始から約3ヶ月までは、ほぼ同程度の脱窒活性であったが、それ以降に採取したグラニュールでは、酢酸での比脱窒速度がグルコースの場合のそれに比べ約1.4倍となり、グラニュール内では酢酸を炭素源として利用する経路が安定的に形成されたことが示唆された。 複機能グラニュールを充填した実験槽による連続処理実験を開始し、約10kg-COD/(m3・d)で一定の流入COD負荷の下で流入水のN/COD比を徐々に増大させたところ、その比が0.2までの範囲では、約90%以上のTN除去率ならびにCOD除去率が安定的に達成された。槽あたりのメタン生成速度は、N/COD比の増大に伴い減少し、脱窒よる有機物消費に強く依存することがわかった。
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