本研究の目的は、河川水においてレジオネラ属菌が生育しない水質条件を明らかにすること、操作が簡単で特異性の高いレジオネラ属菌の新しい分類法を確立することの2点である。 山梨県内河川において、62地点のべ95回の採水を行い、レジオネラ属菌と水質の調査を行った結果、以下の点が明らかとなった。62調査地点中14地点で、レジオネラ属菌が検出され、検出率は20%であった。レジオネラ属菌が検出された地点のBOD値は3mg/L以下で、生活環境に係る環境基準では、B類型以下に相当し、比較的きれいであった。レジオネラ菌が検出された地点のリン酸イオン濃度は0.02~0.27mg/Lであった。リン酸イオンが検出されない地点では、レジオネラ属菌も検出されなかった。レジオネラ属菌が検出された地点の第一鉄イオン濃度は、0.01~0.31mg/lであった。第一鉄イオン濃度が0mg/lの地点はなかった。第一鉄イオンはレジオネラ属菌の生育に不可欠な物質とされるが、第一鉄イオンはどの地点においてもレジオネラ属菌の生育に必要な量は足りており、他の条件が満たされれば河川水中にレジオネラ属菌が生育してくる可能性が考えられる。 測定自体が簡便で迅速かつ特異性が高い、新しい分類法であるDNA解離波形解析法(Genopattern法)について検討を行った。DNA上の複数ヶ所出現する塩基配列と結合するように設計されたプライマーを用いて、Legionella pneumophilaの血清群1から15の既同定株19株について、それぞれのDNA解離波形パターンを測定しマスターデータを作成した。その結果、波形での分類に有効なプライマーが確認された。各プライマーのGC含量やHit数(レジオネラ属菌DNA上の連続した7つ以上の塩基配列がプライマー配列の中に何回あるかを示した数)と波形パターンの違いには、明らかな関係は見出せなかった。
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