本研究の目的は、河川水においてレジオネラ属菌が生育しない水質条件を明らかにすること、操作が簡単で特異性の高いレジオネラ属菌の新しい分類法を確立することの2点である。 山梨県内河川において20回の採水を行い、レジオネラ属菌と水質の調査を行ない、一般的な水質項目の測定とレジオネラ属菌の検出を試みた。また、レジオネラ属菌については、培養法とリアルタイムPCR法(以下、RT-PCR法)による測定値の比較を行った。培養法でレジオネラ属菌が検出された地点では、4~8CFU/100mLであったのに対し、RT-PCR法で測定した値は7.6×10^2~3.1×10^3 CFU/100mLと、培養法での菌数より高く、生存率(培養法でのCFU/RT-PCR法でのCFU×100)は、0.1~0.5%であった。レジオネラ属菌が検出されなかった地点でも、RT-PCR法では4.4×10^2~2.7×10^3CFU/100mLのレジオネラ属菌が検出された。RT-PCR法では、測定された菌の生死は判別できないため、培地上で生育できないレジオネラ属菌が含まれている可能性も考えられる。一方、生菌数の測定には最低でも1週間を要するが、RT-PCR法では1日で測定結果が得られるものの、生菌が検出された試料での生存率は0.1~0.5%であり、RT-PCR法での測定結果のみを用いると、過大評価になる恐れがあるものと考えられる。レジオネラ属菌の既同定株19株のDNA解離波形解析法(Genopattern法)によるDNA解離波形パターンを測定後、マスターデータとした。浴槽水などから分離されたレジオネラ属菌株について本法による同定を試みた。その結果Y4株、Y5株はATCC33155(血清群3)である可能性が高いことが分かった。今後の改善点としては、プライマーの改良を試みるとともに、複数のプライマーを用いてクロスチェックを行なうことによりさらに信頼性の高い結果が得られるものと考えられる。
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