下水管渠は現在一般的な分流式下水においては主に家庭や事業所から排出される下水をその終末処理施設である下水浄化センターへと運ぶ道の役割を担っており、管渠内では下水中の易分解性有機物の分解が進むことでバイオガスが発生することが知られている。バイオガスには二酸化炭素のような生活に直接害を与えない成分がある一方、硫化水素に代表される毒性のある成分も存在する。下水道施設からの臭気に対する住民の要求水準は高いことからバイオガス発生の抜本的解決は重要であるが、ディスポーザー利用の潜在的需要の増加など近年バイオガス発生を増大させる要因は増加している。下水中の有機物のモデルとしておからを用い含水率を調整してバクテリオシン産生能のある乳酸菌の増殖特性に及ぼす固形物濃度の影響を検討した結果、含水率の低下とともにその増殖速度は急激に低下し、固形物濃度10%を基準として30%の場合には半分以下にまで低下することが明らかになった。固形物濃度30%の場合の含水率はリアクター内で均質な分布とならないことから、実際にはより低い固形物濃度で反応速度が半減すると推定された。また、培養上澄液の効果は中性付近に維持される環境では期待できないことが明らかになった。バイオガス産生細菌と乳酸菌の下水流中における接触モデルを用いた数値シミュレーションから、同じ流下時間で比較した場合、平均的な接触回数は下水管渠内における下水の流下特性の違いによる影響がほとんどみられないが、Reが小さい場合にはそのばらつきが大きくなることが明らかになった。
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