研究概要 |
鉄バクテリア法とは,地下水中に自生している鉄・マンカン酸化細菌(以下,鉄バクと呼ぶ)を生物反応塔に充てんした砂等のろ材上に繁殖させて地下水中の除鉄・除マンガンを行う方法である.鉄バク法の生物酸化のためのろ材馴致にしばしば長期間を要するという問題がある.従来は、微生物側にこの原因を求め、マンガン酸化細菌のろ材への定着と繁殖に長時間を要する、あるいはマンガン酸化細菌の増殖に先だって硝化菌が濾過層に増殖してマンガン酸化細菌の生息環境を整える必要がある、等が唱えられてきた。一方、マンガン酸化反応の化学的側面に注目した研究は十分でない。今回、実際の生物反応塔に近い条件下でのマンガンの生物酸化反応を、シンクロトロン放射光施設SPring8においてX線吸収分光法の1種であるXAFS測定によってin-situ観測する測定手法の開発に取り組んだ。具体的には、カプトンフィルムの窓をつけた通水用カラムを製作してマンガン酸化について馴致済みの生物ろ材をこれに充てんし、2価マンガンを含む水を連続通水しながらシンクロトロン放射光施設SPring8においてXAFS測定に供し,マンガン酸化現象の観測を試みた。並行して、生物ろ材上に生成される鉄バクフロック(鉄およびマンガンの酸化物が主成分、これと少量のバクテリアから成る)がマンガン酸化におよぼす影響についても2価マンガンを接触させた後の鉄バクフロック中のマンガンの価数の経時変化を観測する方法で検討した。試験に供する生物ろ材の馴致方法について試行を重ねた結果、XAFS測定に供しやすい状態の生物ろ材をえることができ、連続通水条件下でろ材表面の微生物と反応する時のマンガンの状態をリアルタイム観測することができた。マンガン酸化が順調に起こっているろ材においてはMn(II)がMn(III)を経て速やかに(IV)価に酸化されるようであったが、あまりマンガン酸化が順調にいっていないろ材ではMn(II)がMn(III)に酸化されるがMn(IV)に至らない傾向があるように見えた。
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