研究概要 |
「研究成果の具体的内容」 海洋性Anammox細菌の高濃度化と窒素除去率の向上を目的に,流入水中窒素濃度あるいは水理学的滞留時間の短縮によって窒素負荷を段階的に引き上げ,窒素負荷1.04kg/m^3/dayにてAnammox反応比から期待される窒素除去率75%を超える窒素除去能を達成した。また,5.0%の塩分濃度下でも窒素除去率の低下はみられず,海洋性細菌に特徴的な耐塩能を有する一方,温度が30℃を超えると窒素除去能の低下傾向が認められるなど淡水性のAnammox細菌とは異なる特性が示された。細菌群集構造解析の結果,主なAnammox細菌は耐塩性Anammox細菌として知られるScalindua wagneriの近縁種と同定され,共存細菌としてNitrosomonas属などのアンモニア酸化細菌が同定された。 「意義と重要性」 これまで,海洋性Anammox細菌の集積培養に関する研究論文は世界でも二例のみで,いずれも,実海水あるいは実海水成分を含む人工海水を用いて成功している。これに対し,本研究では,実海水,市販の人工海水,さらには試薬類を混合して作成した人工海水のいずれにおいても海洋性Anammox細菌の集積培養と窒素除去能の維持・向上に成功しており,今後,培地成分の影響などの新たな基礎的知見につながることが期待される。また,窒素負荷1.0kg/m^3/day以上での海洋性Anammoxリアクタの構築は我々を含めて世界で未だ二例のみであり,今後,リアクタトラブルや一時的な活性低下の原因解明とその解決策を見いだすことで工学的実用に耐えうる技術への展開が期待できる。耐塩能や温度特性についても,淡水性Anammox細菌とは異なる知見が得られ,世界に先駆ける研究成果に向けた基礎的知見が得られた。
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