研究概要 |
「研究成果の具体的内容」 海洋性Anammox細菌(MAAOB)培養系の細菌群集構造と窒素転換能に与える温度と塩分濃度の影響を明らかにした。MAAOBは5~36℃の温度範囲において窒素転換能を示し,23~27℃にて高く安定した窒素転換能を有した。一方,35℃を超える温度下では窒素転換能が低下あるいは不安定になる傾向が認められた。培養槽の基質流入部における微生物グラニュールの細菌群は,5~36℃の範囲では顕著な変化を示さず,温度と窒素転換能との明確な関係は見いだせなかった。MAAOBとしてはCandidatus Scallinduaの近縁種と推定される2種の細菌が検出され,共存細菌ではNitrosomonasやThioprofundumが検出された。 塩分濃度については,0~5%の範囲で変動させて窒素転換能への影響を調べたが顕著な変化は認められず,MAAOBは低塩分濃度下でも良好な窒素転換能を有する可能性が示唆された。 MAAOBによる窒素転換能の向上を目指し,反応槽への基質流入方法を検討した。具体的には,反応槽内での撹拌を行わず拡散のみにて基質を与える場合と,撹拌により窒素濃度の速やかな希釈と均一化を図る場合を比較した。その結果,培養槽内液を撹拌することにより短時間で良好な窒素転換能が得られ,窒素負荷を比較的容易,迅速に上昇させ得ることが分かった。 「意義と重要性」 MAAOBの培養事例は世界的に少なく,窒素転換能への外的環境因子の影響に関する知見も乏しい。本研究ではMAAOB培養系への温度や塩分濃度の影響を明らかにしており,高い学術的意義を有する。また,MAAOBは高い塩分濃度のみならず,低濃度の塩分環境下においても生育でき,かつ良好な窒素転換能を有することが明らかとなり,実用技術への展開に向け重要な知見が得られた。
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