本研究では、砒素で地下水が汚染されたバングラデシュ等で使用することを想定して、鉄バクテリアと金属鉄をハイブリッド化した砒素除去フィルターの適正な製造と維持管理方法、およびこれを用いた持続可能なシステム構築の方法について、明らかにすることを目的としている。本年度は、以下の研究成果が得られた。 (1) 原水中シリカの影響:人工地下水を用いた砒素除去フィルター試験において、シリカ濃度が高い場合に砒素除去性能の低下が認められ、Fe 5mg/L P 0.9mg/Lの条件では、Si 45mg/L以上で、As除去率が90%以下となった。Si濃度は、Fe除去およびP除去には影響を与えなかった。 (2) 砒素除去モデル式の完成:昨年度の成果を踏まえて、原水中のFe、P、Si濃度から、As除去濃度を予測するモデル式を作成した。本モデル式は、バングラデシュの現地試験においても、適用が可能であった。なお、現地のシリカ濃度範囲においては、砒素除去性能に影響を与えることはなかった。 (3) 現地長期試験:昨年度、バングラデシュ農村に設置したフィルターを追跡調査し、1年間後においても砒素除去性能が得られることが示された。また、鉄網の腐食および住民のフィルター清掃に関する知見を得た。 (4) 2段ろ過法の開発:原水砒素あるいはリン濃度が高い場合に対して、フィルターを2回通過させるシステムを検討し、一段ろ過でのリン減少と2段ろ過による砒素除去性能の向上が認められた。2段ろ過は、砒素やリン濃度が高い原水に効果的であるといえる。
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