引張ブレースをもつ一般的な住宅用軽量鉄骨架構のスリップ型復元力特性の弱点について示し、粘弾性ダンパーを用いた制振架構への変更を行った。粘弾性体にイソブチレン・スチレン系材料を用い、粘弾性体の厚さ・せん断面積の決定法について示した。粘弾性制振架構へ強制的に動的な層間変形を与える実験結果からは、制振架構が想定通りの最大せん断力を示し、なおかつエネルギー吸収や変形追従性に優れることを示した。さらに粘弾性ダンパー制振架構、引張ブレース架構を組み合わせ3種の1層試験体の振動台実験でも、制振架構は引張ブレース架構より優れた応答性状を示した。この結果を、試験体を水平バネ系に置換した時刻歴応答解析で、実験の再現精度について検討した。架構の塑性化を抑えることが解析の精度向上に不可欠であり、これがひいては制振設計の精度を高める可能性があることを述べた。 一方で、等価線形化と線形応答スペクトル低減化に基づき、スリップ型復元力特性をもつ構造に粘弾性要素を付加した場合の地震応答予測法および制振設計法も提案した。スリップ型主架構と粘弾性要素からなる一質点構造を、スリップ要素と粘性要素の並列する一質点系を考え、応答のランダム性やスリップ型復元力の複雑な履歴特性を考慮し、塑性化によるシステムの固有周期や減衰定数の変化を定式化した。これに基づき、この一質点系の地震最大応答予測法を提案した。多数のシステム諸元のパラメータと地震波を用いた時刻歴応答解析を行い、本予測手法と他手法の予測精度の検証を行った。結果、本手法はシステムの各諸元値や入力地震波の特性によらず良好な精度を示すことがわかった。本研究で示した等価線形化理論をもとに、各スペクトル一定領域での、簡易応答予測法を導出した。
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