平成20年度は、新潟県中越沖地震時の強震動生成メカニズムを解明するため、まず経験的グリーン関数法によるフォワードモデリングによって震源のモデル化を行い、3つのアスペリティからなる不均質震源モデルを提案した。また、特に柏崎・刈羽原子力発電所の南西側に位置するアスペリティからの地震動の影響が顕著であり、その原因を3次元有限差分法を用いた理論的シミュレーションによって検討した結果、この地域における深部、浅部の摺曲構造による地震波のフォーカッシングが大きな原因であったことを確認した。 平成21年度は引き続き新潟県中越沖地震(Ml6.8)時の柏崎・刈羽原子力発電所における記録の分析などから、比較的良質な地盤(岩盤)上に立地する原子力発電所サイトでなぜ被害に結びっく強い地震動が観測されたのか、原子力発電所の耐震設計審査指針(以下、指針)においてこのような強震動が予測可能なのか、などの研究を実施する予定であった。そんな中、平成21年3月に駿河湾を震源とする地震が発生し、中部電力株式会社・浜岡原子力発電所において特異な観測記録(号機によって観測地震動の大きさが顕著に異なる)が得られ、一般に公開されたため、まずこの地震に対する研究計画を立てそれを優先することとした。研究内容にっいては本研究全体の目的に合致するものである。得られた成果や進捗状況としては、まず震源モデルを構築した。また今回の観測記録が地震波の伝播経路の影響によって得られた可能性を考え、地下構造調査の一環として浜岡原子力発電所やその近傍において多点微動観測を実施した。現在データ解析中である。 また、指針では、震源を特定せず策定する地震動の評価が要求されており、本研究では地域的な地震規模評価や震源断層モデルによる震源近傍域での地震動評価を行ない、現在指針に適合するとして採用されている地震動レベルの妥当性の検証を行なった。
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