研究概要 |
近年、液状化の可能性のある軟弱地盤上に、杭基礎を用いた高層建物や免震構造などの長周期構造物が建設されている。しかし、液状化地盤における長周期建物の杭応力は不明な点が多い。そこで本研究では、液状化地盤における長周期構造物の杭応力を検討するため、まず、固有周期が5秒(実大スケール)の上部構造物模型を設計・製作した。次に、上部構造物が短周期のモデルと長周期のモデルで液状化地盤-杭-構造物系の遠心実験を、長周期成分を多く含む八戸波(1968,NS)で京都大学防災研究所の遠心載荷装置を用いて40g場で行った。その結果、以下のことが分かった。 (1)長周期モデルの上部構造物慣性力は小さく、かつ基礎部慣性力と逆位相である。短周期モデルのそれらは同位相である。このため、長周期モデルでは、上部構造物慣性力と基礎部慣性力の和が短周期モデルのそれより小さくなる。 (2)長周期モデルでは、上部構造物加速度が地表面加速度と概ね逆位相となる。上部構造物慣性力は基礎部変位を小さくする方向に作用し、基礎部および杭の変位は短周期モデルのそれより小さくなる。そのため、長周期モデルの地表面と基礎部の相対変位と、地盤と杭の相対変位が短周期モデルのそれより大きくなり、基礎部に作用する土圧、杭に作用する地盤からの外力も大きくなる。したがって、長周期モデルでは、構造物慣性力が極めて小さいにもかかわらず、杭端せん断力は短周期モデルと同程度になった。 以上から、液状化地盤における長周期建物の杭基礎は、構造物慣性力の影響は小さいものの、地盤からの外力の影響を短周期建物の杭基礎より強く受ける可能性のあることが分かった。このことは、液状化の発生が想定される地盤で長周期建物の杭基礎を設計する際、地盤からの外力に十分に留意することが必要であることを示唆している。
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