平成20年度には、リアルタイム・ハイフリッド実験のシステムの開発と小型構造模型による振動台実験結果の蓄積を行った。このときセミアクティブ制御装置として使用したのは、MRダンパーである。これは磁場の作用で見かけの粘度が変化する磁気粘性流体(MR流体)を使用しており、ダンパー内の電磁石に印加する電流値を変化させることで、ダンパーの減衰力を変化させることができる。17-18年度の科研費によって設置した高速アクチュエータに、リアルタイム・ハイブリッド実験システムの構築を行った。この高速アクチュエータに、変位と速度によってフィードバック制御されており、可変ダンパーの計測された制御力を加えた運動方程式の解である変位と速度を試験器に指示し動作させる。それと同時に、可変ダンパーには制御即に従った制御力を発生させるための電流が印加される。これらの動作をリアルタイムで実施することによって、リアルタイム・ハイブリッド実験のシステムが開発された。 小型構造模型による振動台実験は、同じ試験器の一部を振動台として使用して実施した。3層の基礎固定構造模型の1層目にMRダンパーを設置した制振構造、それらを3層基礎固定構造模型を2棟設置しそれぞれをMRダンパーで連結した連結制振構造、2層の上部構造を持つ免震構造の免震層にMRダンパーを設置したものの3とおりについて、セミアクティブ制御実験を行い、それぞれに良好な制御結果を得た。具体的には、床応答加速度を上昇させないで(居住性・機能維持性を守りながら)、応答変位を低減する(安全性を向上させる)ことが、セミアクティブ制御によって可能になることが確認できた。
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