本研究では、セミアクティブ制振構造の挙動を、大がかりになりがちな振動台実験に頼らず、高速アクチュエータによって実施できろ、リアルタイム・ハイブリッド実験で解明しようとするものである。ハイブリッド実験は、構造物の解析可能な部分はコンピュータシミュレーションにより挙動を追跡し、構造物の中で挙動が未解明な部分を試験体とした加力を連動して行う実験であり、未解明な部分の挙動を実験で正確に評価しながら建築構造の全体挙動を追跡する実験手法である。リアルタイム・ハイブリッド実験は、このセミアクティブ制御に対してこそ有効性が広まる実験手法であり、従来では振動台実験によらなければ明らかにできなかった現象が、高速アクチュエータとコンピュータシステムによって可能になるという意義があり、振動台実験との比較から、その信頼性を確認し、実施できるようなったことは重要である。 平成22年度は、セミアクティブ制御の減衰性能の評価に関する研究を行った。本課題では、建築構造物の安全性に関わる応答変位と機能維持・居住性に関わる加速度の両方を低減させるか、加速度を上昇させないで応答変位を低減させることが重要であり、セミアクティブ制振構造の長所と考えている。そこで、加速度と応答変位の低減効果を評価できる指標として、応答変位および絶対加速度を両軸にとった座標上で、応答結果の原点からの距離を採用し、それによってセミアクティブ制御効果を評価できることを確認した。またセミティブ制御の効果に密接な関係ある物理量として等価サイクル数が有力であり、等価サイクル数を大きくできる制御方法が望ましいことが明らかになった。その具体例として負剛性制御が活用できることを提示した。
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