これまでの研究より補強用として半ねじの高強度ボルトを使用すると、ねじの長いアンカーボルトの場合、変形に追随出来ないことが知られたため、本研究では全ねじ高強度ボルトを採用することで解決しようと試みた。しかし、その効果は見られるものの十分ではなかった。そのため新たに高強度ボルトの頭部とアンカーボルト頭部に5mmの隙間をあけることにより、アンカーボルトねじ部がある程度塑性変形してから高強度ボルトが効き始めるように工夫することで塑性変形能力の向上と設計で想定した破壊形式の実現を目指した。その状態で以下の実験およびデータ収集を行いその効果が十分であることを確かめた。 (1)補強アンカーボルトの引張試験を行い、想定される二つの破断形式に対する耐力評価式が有効であり、提案した方法で塑性変形能力評価が可能であることが、確かめられた。また、上記の補強方法では頭部の隙間5mmがアンカーボルトの塑性変形能力として確実に参入できるので有利である。ベースプレートの傾き(0.045rad)を模擬した偏心引張試験により耐力と塑性変形能力に対する偏心の影響はほとんどないことが確かめられた。また、アンカーボルト20〜30φと高強度材との組合せを検討した結果、高強度ボルトがF14Tであればすべでのアンカーボルトに対して補強が可能であり、F12Tでも数種類の径のアンカーボルトの補強に使用することが可能であることが知られた。 (2)高強度ボルトで補強したアンカーボルトのせん断耐力の実験により、補強したアンカーポルトのせん断耐力は、せん断位置が変化しても補強前の状態より確実に上昇することが確認された。 (3)普通鋼の素材特性として140データを収集し、更に収集を継続する。現在、ひずみ硬化開始ひずみと降伏点からの耐力上昇率とひずみの増分関係を整理しているところである。
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