これまで行ってきたアンカーボルト単体の実験を踏まえて、21年度はまず露出柱脚の載荷実験を行った。古い建物では鋼材の降伏比が70~80%と高いものが地震時に破断する可能性があるが、実験に使用する材料は70%以下と良好な材料であるので、柱脚に必要とされる回転角0.03rad(アンカーボルト軸ひずみで3%)を満足するだけではその有効性を確認したとは言えない。そのため本実験でも、アンカーボルト単体の引張試験の場合と同様にアンカーボルト破断時の耐力評価方法、アンカーボルト伸びの予測方法が有効であることを確認した。これにより、アンカーボルト素材の応力-ひずみ関係が与えられれば、提案した方法で露出柱脚(アンカーボルト)の塑性変形能力を評価することが可能となった。 上記の結果を踏まえて、まずアンカーボルトの径ごとにYR=0.8で降伏点475N/mm^2を仮定してα・YR≧0.84(鋼構造協会の改良型切削ねじアンカーボルトの規準値と同等となる式、α:破断耐力を軸部降伏応力の倍数で示したもの、YR:素材の降伏比)を満足するアンカーボルトと高強度ボルトの推奨しうる組合せを決定した。そして、既存露出柱脚に使用されている可能性の高い旧SR24の素材強度(降伏点、引張強さ)のばらつき(平均値と標準偏差)を考慮しても、その組合せであればα・YR≧0.84を満足する確率は95%以上であることを示した。 次に、旧SR24などの応力-ひずみ関係は入手できないことから、SS400を中心として広範囲な降伏比(YR)を有する応力-ひずみ関係70データを収集した。それより、前式の下限値であるα・YR=0.84のときのアンカーボルト軸ひずみを算定したところ、94%は柱脚アンカーボルトに必要とされるひずみ3%を満足することが確かめられた。3%を下回る場合でも、高強度材とアンカーボルトの間に5mmの隙間をあけており、それがアンカーボルトねじ部の確実に期待できる伸びとなるので、それを考慮した換算軸ひずみは3%を越えることが示された。これより、本補強を施した既存露出柱脚は二次設計レベルの地震荷重に対して十分な耐震性を有することが確かめられた。
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